稲沢のむかしばなし 夢にあらわれた蛇(稲沢市長野町)
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長野町の万徳寺に伝わる「夢に現れたヘビ」というお話です。
「うわー、ヘビだ。ヘビが冬眠しとるぞ」
「おい、こっちにも、でっかいのがぎょうさんおるぞ。アオダイショウにシマヘビ、アズキヘビ、それに…」
明治の終わりごろ、万徳寺の山門の東に、御岳山という塚をつくるため、村中の人たちが、お寺の囲いの土手をならしておったときのこと。
稲刈りや脱穀もすんだ、冬の初めのころだったので、冬眠しているへびが見つかった。それも、何匹おるか数えきれん位おったので、ビクに入れて計ってみたら、なんと12貫(45kg)もあった。
「村中のヘビが、ここに集っとるんじゃないかのう」
村の人たちは、びっくりするやら、感心するやらで、大さわぎであった。一部の人たちから、殺してしまったら、という話もあったが、結局は、治郎丸の大江川の堤へ運んで、にがしてやることにした。でも若者たちは、一番大きな、2mもあろうと思われるヘビだけは、にがさず、棒などでつついて、遊んでいた。
そのうちだれかが、「おい、こいつの頭を、ちょん切ってやるか」と言って、その場で切り落としてしまった。
すると、その晩から三日三晩、万徳寺のおしょうさまの夢まくらに、殺されたと思われるヘビが現れた。
「ああ、苦しい。おなかの子どもが死んでしまった。なぜこんな殺され方を、せにゃならんのだ。安らかに眠れるよう、供養してくれ。そいでないと…」
夢からさめたおしょうさまは、体中びしょびしょであった。あの大きなヘビ、どうもメスの親ヘビだったのである。そこでおしょうさまは、石に「善女竜王」ときざんで、長く供養してやった。
この石、今もこの万徳寺の御岳山の塚の上に、のこっています。