稲沢のむかしばなし 麦止め大菩薩(稲沢市七ツ寺町)
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稲沢市の南部にある七ツ寺の「麦止め大菩薩」というお話です。
今から、百数十年も前のことじゃ。
七ツ寺の田畑はやせていて、あまり米や麦がとれなんだ。そのうえ、その年は雨が多くて、特にできがわるかった。お百姓さんたちは、「おい、おい。こんなひょろひょろの麦じゃあ、とてもねんぐを出すのは無理だ。」「そうだとも、いつもの通りねんぐをとられた日にゃ、村中うえ死にだァ。庄屋さまに、お代官所へたのみに行ってもらおう。」「そうじゃ、それがええだぁ」とわいわい話し合いました。
家へやってきた村人の話を聞くと、庄屋さまは、「よし、わかった。わしもそのことを考えていたところじゃ。ひとつ、みんなもいっしょに代官所へいってくれんかのう。」「もちろんいっしょに出かけますだ。」そんなわけで、庄屋さまを先頭に村人たちは代官所へおしかけた。すると、代官は、庄屋の義兵衛一人だけを中に入れた。話しを聞くと、「義兵衛、お前は、村の者たちをそそのかしおって、このふとどき者めが。」としかりつけた。そして、村人たちに、「んー。お前たちの話はじゅうじゅうわかった。
ねんぐは、納めずともよい。義兵衛は少し用ができたからのう。お前たちは先に帰ってよいぞ。」とめいじました。
しばらくたって、「義兵衛は病気で死んだ。」と知らせがあった。
村人は、庄屋さまの死をかなしんで、寺の境内に、「麦止めの大菩薩」とほった石碑をたてたそうじゃ。