稲沢のむかしばなし 梅姫様(稲沢市梅須賀町)
- [更新日:]
- ID:2600

梅須賀町に伝わる「梅姫様」というお話です。
昔々、京の都に「梅」と申される、それは美しいお姫様が、いらっしゃった。このお姫様、みんなからとても親しまれ、毎日楽しい平和な日々を、過ごしておられた。ところが、お姫様が十六歳のとき平和であった京の暮らしが一変して、おそろしい戦さのうずに、まきこまれてしまった。
「姫、この京におっては、命があぶない。さっそくおともをつれて、睦の国へにげるがよい」「でも、父上様は」「わしのことは、心配せんでよい。さあ、今夜にも立つがよいぞ」数人のおともをつれたお姫様は、星のきれいな夜、そっと、鎌倉街道を東に向かって、旅立たれた。お姫様とおともは、ただひたすらに、歩きつづけた。途中、あまり急いだせいか、おともの田中肥後は、道に迷ってしまった。
「お姫様、申し訳ございませぬ。道に迷ってしまいました。」
「ああそれより、私は歩きつかれた。どこかで休みたい。」
ちょうど一行は、矢合町の鈴置神社を通りかかったので、ここで泊まることにした。お姫様はじめ、おともたちは、歩きつかれたのか、ぐっすりと寝込んでしまった。
真夜中になって、田中肥後は、ガサッ、ガサッという人の足音で目がさめた。敵の兵隊が、まわりをかこんでいた。
「あっ、お前たちは」
「ムッムッム、お前が梅姫だな。お前を待っておったぞ。すぐに引っ立てい」
「あっ、お姫様、お姫様・・・」
田中肥後が、必死になって止めるのをふり払い、どこかへ連れていってしまった。おともの一行は、将軍様に申し分けないと、のまず食わずで、毎日毎日、朝から晩まで、お姫様をさがしまわった。しかし、とうとう見つけることが、できなかった。田中肥後は、とても悲しんで、この地に塚をきづいて、とむらった。
その後、この塚は梅塚と呼ばれやがては、梅須賀という地名に、なったといわれている。