稲沢のむかしばなし 馬観音(稲沢市片原一色町)
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片原一色町に伝わる「馬観音」というお話です。
昔、片原一色村に、ものすごく足のはやい「カネイ」という、馬がおった。
毎年、あっちこっちで行われる競馬では、いつも一着。その優勝の旗が、かぞえきれないくらいあり、村の自慢の一つであった。
秋になって、木曽川の川向うで、恒例の競馬が行われ「カネイ」も出場した。
「カネイ、がんばれ、まけるな。よーし、そのまま行け」
他に、たくさんの馬が走っていたが、カネイにかなう馬は、いなかった。
「カネイが一着だ。優勝だぞ」
村の人たちは、大よろこび。カネイも勝ったのがわかるのか、一段と高く”ヒヒーン”と、いなないていた。
村に帰って盛大な祝賀会が行われることになった。ついてきた村の人たちは、カネイの汗をふいたり、頭をなでたりしながら、舟で、木曽川を渡り始めた。川の中ほどへきたとき、楽しみをまちきれないのか、とうとう、酒盛が始まった。
「やっぱりカネイは、日本一だぜ。なあ、おい」
「あったりめえよ。来年の春の競馬も、絶対優勝だぜ。なあ、カネイ」とふり向いたとき、何におどろいたのか、カネイが突然あばれ出した。必死に止めようとしたが、とうとう、川へおちてしまった。
村の人たちは、酔もわすれて、船に引き上げようとしたが、重くて上がらない。
しかたなく、おぼれさせないようにたずなをもち、泳がせ、岸へ引っ張っていった。
夕方になって、カネイが急に苦しみ出したので、医者にみてもらった。しかし、夜中になって、とうとう死んでしまった。
村の人は、ひどく悲しんで、その後、近くの畑に観音様を建てて、お祈りしたということです。