稲沢のむかしばなし 長束梅林(稲沢市長束町)
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稲沢市のちょうどまん中あたり、長束町という町があります。この長束町には、長束梅林とよばれるように、たくさんの梅の木がありました。これは、この梅の木にまつわる、ずっと昔のお話です。
”ホー、ホケキョ・・・ホー、ホケキョ”うぐいすのなき声が、長束梅林にひびきわたります。
「きょうは、風もなく、あたたかの日じゃわい。長束梅林の梅も、今がさかりじゃ。どれ、みんなで見にいこみゃあか」と、ヨサクどんとタサクどんは、べんとうかたてに出かけて行きました。
その日は、ちょうどお茶会が開かれていました。それぞれに思いうかぶ歌やはいくをつくっては、はっぴょうしています。
「タサクどん、ここも長束梅林とよばれるようになってから、たくさんの人がおしかけて来るようになったなも」
「ほんになぁ、ヨサクどん。むかしは、梅の木なんて数えるほどだったに・・・」
むかし、長束という村にキュウベエというおひゃくしょうさんが住んでおったそうです。このキュウベエさん、たいへんしょうじきもので、村の人たちからしたわれていました。キュウベエさんは、ある日、お伊勢まいりに出かけました。そして、その帰り道、大きな梅の木の下でひと休みしました。しらないうちに、キュウベエさんは、スヤスヤとねむってしまいました。キュウベエさんは、ふしぎなゆめをみました。大きな梅の木が、キュウベエさんに、こう言うのです。
「キュウベエさん、わたしはあなたがこの道を通られるのをまっておりました。わたしの下で、たくさんのたび人が、しょうじきもののキュウベエさんの話をしてみえました。わたしは、あと数年のいのちです。わたしの子どもを、あなたにおあづけしますので、あなたの家のにわにうめてやってください。どうか、おねがいします。」キュウベエさんが目をさますと、げんこつほどの大きさの梅の実が、かたわらにおかれていました。
キュウベエさんは、家につくと、さっそく、うらにわに梅の実をうめてやりました。その後、キュウベエさんは、この梅の話をだれにもしなかったそうです。
月日はながれ、キュウベエさんが住んでいたところには、山内九四郎という人が住んでいました。
ある日、うらにわに出てみると、ひとりばえの梅の木がはえていました。九四郎さんが、たいせつに梅の木を育てると、みるみるうちに大きくなり、次の年の春、大きな梅の実をつけました。この実、タネが小さく、ニクはあつい、また、たいへん味がよいので、市場で高く売れました。ですから、つぎ木で、梅の木がたくさんうえられました。こんなことから、長束村のことを長束梅林ともよぶようになったということです。
お昼になり、おべんとうを、ヨサクどんとタサクどんがひろげると、二人とも、大きな長束梅のおむすびです。
「ほんに、この梅は、ニクがあつくておいしいのぉ。いまでは、となりの市場まで、大八車の行列だそうじゃ」おしまい。