稲沢のむかしばなし 代官と赤ん坊(稲沢市今村町)
- [更新日:]
- ID:2581

今村町に伝わる「代官と赤ん坊」というお話です。
昔、お殿様が土地と人を支配していたころのこと。現在の今村町は、犬山藩の藩主「成瀬隼人正正成」の領地であった。
また、藩からは、山本次郎左衛門というお代官が出向いて、この地をおさめておった。
ある日の夕方、お代官が村をひとまわりして帰ろうと、村はずれのお地蔵様の前に来たときのこと、赤ん坊の泣き声に足を止めた。
「オギャー、オギャー・・・・・」
よく見ると、大きな赤ん坊が、ワラにくるまれておいてあった。代官はそうっと抱き上げて、あやしながら、自分の屋敷へ連れていった。あくる日、さっそく役人を呼びつけ
「この村に、わが子を捨てる不届き者がおる。言語道断じゃ」
役人たちは、お互い顔を見合わせた。
「お代官さま、この村にはそのような情知らずは、おりません」
「なにをぬかすか。赤ん坊がここにいるではないか」
「これはきっと、よそ者がおいていったにちがいございませぬ」
「それに間違いはないか」
「へへー、間違いございませぬ」
このことがあってから、お代官は赤ん坊がかわいくてしかたがなく村を見まわる時は、必ず背負っていった。
村の人たちは「なんて心やさしい、お代官さまじゃ」と顔を合わせるたびに、ささやきあっていた。
それもそのはず、お代官には子どもがなく、その上、女房も病気でなくしていた。
こぼんのうなお代官は赤ん坊を”真之助”と名付け、たいへんかわいがった。
お殿様もこの話を聞いて、たいへん心を打たれ、お代官をほめたたえた。
それから後、村人からもうらやまれる程、立派に成長した真之助は、父の代官といっしょに村の人たちのために、一生懸命働いたということです。