稲沢のむかしばなし 千丁沼の大蛇(稲沢市緑町)
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緑町に伝わる「千丁沼の大蛇」というお話です。
「おみゃあさん、まあぼちぼち稲刈りをやめて、はよう、きゃあてこみゃあきゃあ」
「ああ、そうだな、おそぎゃあでなあ」
今の緑町、昔は千丁沼と呼ばれる、大きな沼があったところでな。ここには、何十匹もの大きな蛇か、すんでおった。
村のひとたちは、田んぼへ行くにも、まわり道をして通ったもんだった。というのはな、この大蛇、毎日国府宮さまへ行くということでなあ、そのすがたを見た人は、みんな目がつぶれたり、おかしな病気になるちゅうことだった。
ある日、茂作が沼の近くにある川のどろを、じょうれんで田へすくいあげとった時、突然、丸太のようなでっかいものをひっかけた。
何だろうと思って、引きあげてみたら、大きな蛇の背中がでてきた。
茂作はびっくりして、じょうれんを放り投げて、足を引きずりながら、家に帰っていった。
その夜、茂作は高い熱を出して、うなされてなぁ。それが一週間もつづいたちゅうことだった。
またある日、与作が、刈り取った稲を片づけておったらな、小さな蛇が「シュー、シュー」と、音を立てて、とぐろを巻いていた。与作は蛇のしっぽをつかんで、
「こしゃくせえ、生意気だ。こんなもんたたき殺したる。」といって、殺してしまった。
それからどうしたことか、与作の家の者が、わけのわからん病気になってなぁ。とくに、おじいちゃんやおばあちゃんが、長いこと苦しんどった。
村の人たちは、さっそく、きとう師に見てもらうことにした。きとう師は、声をふるわせて
「うん、これは大変じゃ。病人の背中に大きな蛇が、乗っかかっとる。沼の蛇を殺した“バツ”じゃ」と叫んだ。
村の人たちは、さっそく神明社を建てて、この中に、蛇を祭りこんだ。それからというもの、変な病気は、なくなったということじゃ。
この神明社は、現在、緑町の神社として、町内のかたの氏神様となっています。