稲沢のむかしばなし 千丁沼の主(稲沢市大塚町)
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いまの南緑町のあたりは、むかし、昼間でもうすぐらい大きな沼が、いくつもありました(いまの稲沢東高校のあたりのこと)。大塚の人たちは、これらの沼のことを千丁沼とよんでいました。
村人たちは、この沼をたいそうこわがっていました。それは、千丁沼の中にあるいちばん大きな沼に、大きな白ヘビがすんでいたからです。
むかし、千丁沼の近くに、村人たちをいじめてばかりいるわるい役人たちが、すんでいました。役人たちはいつも村人たちから、おもいねんぐ(ゼイ金のこと)をとりたてていました。そして、村人たちがまずしいくらしをしているにもかかわらず、この役人たちは、はなやかで・ぜいたくなくらしをたのしんでいたのです。
ある夏のこと。
大きな台風が、この村をおそいました。そして、田んぼやはたけのやさいをめちゃくちゃにあらしてしまいました。
村人たちは、たいそうこまりました。
「わしら、このままでは、うえ死にじゃ。お役人さまのねんぐのとりたてもきついで、わしら、首をつるしかねえなあ」
いっぽう、わるい役人たちは、あいかわらずぜいたくなくらしをつづけていました。そして、毎日のように、まずしいくらしをしている村の家々に、おもいねんぐをとりたてにおしかけていました。
「ねんぐを出さんか。」
「お役人さま、ねんぐはおろか、わしらの食う米すらございませぬ。どうか、ごかんべんを・・・。」
「なにをほざくか。このバカものめが。はやくねんぐをださぬか」
村人たちは、ねんぐまでとられ、こまりはててしまいました。
こうなっては、村人たちがたよれるのは、神さまだけです。村人たちは、くるしいときの神だのみとばかりに、ひっしにおいのりをしました。
すると、ふしぎなことに、だんだん空のくもゆきがわるくなって、はげしい雨といなずまがふりそそぎました。そして、どこからか、ぶきみな声がひびきました。
「ゴォ―、ゴォー。これー役人どもよ。お前たちをゆるさん。わしが、村人にかわって、てんばつをくだすー。ゴォー」
このように聞こえたかと思うと、とつぜん、いままで見たこともないことがおきました。このよのものと思えないほど、天がまっ赤になり、天をゆるがさんばかりのかみなりがひびきわたりました。
つぎの朝、村人たちは、あのものすごいかみなりのおちたところにあつまっていました。そこは、ぜいたくばかりしていた役人たちの家でした。家は、めちゃくちゃにこわれ、役人たちはこわれた家の下じきになって死にたえていました。
そして、またふしぎなことに、こわれたヤネの上には、村人たちがおそれていたあの大きな白ヘビがよこたわって死んでいました。
村人たちは、わるい役人たちをたいじしてくれた大きな白ヘビが、自分たちのまもり神だとしんじました。そして、まもり神である白ヘビをとむらい、神社をつくり、すえ長くまつったそうです。