稲沢のむかしばなし ちょうちんとぼし(稲沢市池部町)
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「ちょうちん、とぼそかえー」
「いいよぉ」
「ちょうちん、とぼそかえー」
「いいよぉ」
いまでも、池部町の子どもたちは、町内をちょうちんを持って回っています。この『ちょうちんとぼし』にまつわるお話です。
むかし、むかし。池部という村に、いつたてられたかわからない、古いじぞうどうがありました。このじぞうどうには、50cmくらいのおじぞうさまがまつられておりました。このおじぞうさま、たいへんな子どもずきで、じぞうどうの前で遊ぶ子供たちを見ると、わらった顔になるとか。
ある年のこと。
じぞうどうの前のタロベェさんとこに、元気な男の子が生まれた。この子は、名をタロウといい、ワンパクぼうずに育っていきました。ワンパクなタロウの心のやすらぎは、おじぞうさんの顔を見ることでした。じいっと見ていると、おじぞうさんと遊んでいるたのしいゆめが見れたのです。
ある夜のこと。
タロベェさんのとなりの家から火が出、タロベェさんの家も、すぐに火にのみこまれてしまった。タロベェさんは、気がつくと、さっそくかあちゃんや子どもたちをおこした。外へにげ、近くの川のそばまで来た。タロベェさんは、子どもたちの数をたしかめると、タロウがいません。村中は、ハチのすをつついたようなさわぎです。タロウは、何かあったかいなぁと、目をあけました。火が目の前まで来ています。にげようにも、どこにもにげるところがありません。
「おじぞうさま、おじぞうさま、どうかたすけてくだせぇ。おじぞうさまぁ!」
タロウは、ただおじぞうさまにいのるしかありません。タロウは、ガタガタふるえるばかり──。
そこへ、一すじの光がさしこみ、タロウのまわりをつつみました。すると、ふしぎなことに、火が体にもえうつらないのです。
「タロウや。わしは、おまえがいつもおいのりしてくれるじぞうじゃ。そのまま、わしのじぞうどうまで来るがよい。そのままでは、いつかやけてしんでしまう。」
おじぞうさまの声を聞くと、タロウは急に力が出てきました。言われたとおり、光にしたがって歩いていくと、じぞうどうは光にかがやいています。まわりは、すっかり火の海で、草一本ものこさずにやけるいきおいでもえています。
朝になり、火はきえました。タロウは、じぞうどうをとび出すと、みんなのいる川のほうへと行きました。タロウの話を聞いたタロベェさんは、こう言った。
「そうか、おじぞうさまがたすけてくれたか。子どもずきのおじぞうさんじゃで、みんなで遊びに行ってりゃあ」
こうして、村の子どもたちは、ちょうちんをとぼして、月一回じぞうどうに集まり、おじぞうさんと遊んだそうです。