稲沢のむかしばなし だましキツネ(稲沢市増田町)
- [更新日:]
- ID:2536

増田村には、八神街道という大きな道が通っていました。増田村の西に、大きな森があり、この道を通る人は、かならずこの道を通らなければなりませんでした。
この森には、たくさんのキツネが住みついていました。その中の1ぴき、いたずらコンタのお話です。
むかし、むかしのお話。
まだ、いまでいう4時ぐらいでしょうか、くらい道を一人の男が、にぐるまを引っぱっていました。
「よいしょ、よいしょ。そろそろ増田村の森のあたりか・・・あーあ、それにしてもねむいのぉ」
ゴヘイさんは、ねぼけまなこをこすりながら、にぐるまを、いっしょうけんめい引っぱりました。
きょうは、きのうのうちにとり入れておいたハクサイとダイコンを、市場に運んで行くところです。
「となり村のゴヘイどんとこの、ハクサイとダイコンが、たいへんうまいと聞いたわなも。ちょうど、ゴヘイどんがやって来たで、いっぺんからかったろか」と、コンタはコウモリにばけて、ゴヘイさんに近づきました。
「あーあ、ねむい、ねむい。わしは朝に弱いで、足がフラフラしとるわぁ」
ゴヘイさんは、あいかわらずブツブツ言いながら、にぐるまを引いていました。
それを聞いたきつねのコンタ、
「しめしめ、ゴヘイどんめ、ねぼけてやがる。こりゃ、ばかすのがかんたんだわい」
と言うが早いか、森の中へヒラヒラと飛んで行きました。
「あれぇ、もう東の空が明るくなってきた。こりゃいかん、急がんと市場に間に合わんようになってしまう。急げ、急げ」ゴヘイさんは、ぐいっと力を入れ、にぐるまを引きだしました。
「重そうなにもつじゃなあ。急がんと市に間に合わんぞ。わしが後からおしてやるわぁ、コン・コン」
と、とつぜん後のほうからおひゃくしょうさんの声が聞こえてきました。
「わしは、ちょうど市場のある村の、一つむこうの村に住むものじゃ。ちょっとこっちに用があって、あそびに来とったんだわ。それにしても。ええハクサイじゃのぉ、コン」
ゴヘイさんは、すっかりらくになって、ちょうしよくスタスタとにぐるまがすすみました。
しばらく行ってから、後をふりむくと、にぐるまのうえのハクサイやダイコンは、きれいさっぱりなくなっています。
ゴヘイさんは、ほっぺたをつねりながら、
「いてぇー!こりゃあユメじゃねえ、いってえどうして・・・さっきまでちゃあんとあったのに・・・」
と、にぐるまをポケェーと見ていると、一まいの紙がおいてあります。
紙には、きつねのコンタの顔が書かれていました。
「こりゃ、きつねにバカされただか。まいった、まいった」
ゴヘイさんは、とぼとぼと村にかえっていったということです。
きつねのコンタの、だましがち!