稲沢のむかしばなし おこりおとしばし(稲沢市増田町)
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むかし、戦国時代という、いくさのつづいていたころの話です。清洲のしろには、織田信長という、とのさまがすんでおられた。
この話は、信長が天下をとる前におこったと、つたえられています。
ある朝早くのこと。空は黒い雲におおわれ、イヤな日だった。この空をじっと見つめている、一とうの馬がいた。その馬こそ、信長の愛馬の”シロ”である。
昼ごろになると、朝のことがうそのように、晴れわたっていた。
信長が昼ごろにおきると、けらいの話し声がする。
「おい、知っとりゃすか。となりの増田村でなも、きょう、まつりがおこなわれるそうだ」「長い間、おこりというおそろしいびょうきが、はやっとるでなも」
「きょうの秋まつりは、ハデにやるそうだぎゃあ」
子どものころ、よく遊んだ増田村で、まつりがおこなわれると聞いた信長、さっそく出かけることにした。信長は、シロにまたがり、増田村へと走らせた。
「ハィー、ハィー、はよ走れ!」
ところが、増田村にかかるはしまできたときのこと。とつぜん、シロがあばれだした。信長は、シロをなだめ、わたろうと思ったが、シロは、ますますあばれるばかり。
とうとう信長は、シロから、ふりおとされてしまった。シロは、何かにおびえるように、しろへ、にげ帰ってしまった。信長は、ボウゼンと愛馬を見つめていた。
信長は、このことをふしぎに思い、よく日、増田村の庄屋をよび、たずねた。庄屋がいうのには、
「あのはしは、馬にたたっておりますじゃ。あの橋を馬に乗ってわたると、おこりという、おそろしいびょう気になりますのじゃ。いままでにも、たくさんのおサムライさまがなくなってのお」
信長は、せすじが、さむくなるのをかんじていた。
数日後、信長は、村の人々を思い、たくさんのマメをおくった。村人が、おこりというびょう気にかからず、マメにくらしなさいと。
さっそく庄屋は村人をあつめ、はしにマメをおそなえし、ひっしにおいのりをした。すると、おこりにかかっていたものも元気になり、それからは、馬にのってはしをわたっても、おこりというびょう気にならなかったとさ。
めでたし、めでたし。