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    合併シンポジウム(平成15年10月19日)

    • [更新日:]
    • ID:1643

    合併シンポジウムが開催されました

    写真:シンポジウムの様子

    平成15年10月19日(日曜)、稲沢市民会館中ホールで合併シンポジウムが開催され、1市2町の住民約350人のかたの参加がありました。
    シンポジウムでは、過去3回にわたって開かれた合併協議会での協議事項や進捗状況、住民懇談会の開催状況の報告の後、「市町村合併についての国の動向と地域の選択」をテーマに、関西学院大学教授の小西砂千夫さんによる基調講演が行われました。
    最後にパネルディスカッションが行われ、各パネリストからは、合併の重要性、それに対する期待や思いが述べられました。

    講演会

    合併シンポジウム

    平成15年10月19日(日曜)
    稲沢市民会館 中ホール

    ≪基調講演録≫

    演題 『市町村合併についての国の動向と地域の選択』
    講師 関西学院大学経済学研究科/産業研究所 教授 小西 砂千夫 氏

    関西学院の小西と申します。
    お見かけどおりの若輩者でございまして、「お見かけどおりの若輩で」というのは河内音頭にあるんですけれど、若輩者でございまして、「なんや、あんな若造か」と思われた方も多いかと思いますが、若造でございますので、ところどころ言葉足らずの点があろうかと思いますが、若造故にご容赦いただきたいと思うわけでございます。本日はお招きをいただきまして、こういう立派な会場でお話をさせていただけるというのは、大変光栄に存じております。
    本当に天気がいいものですから、あちこちで運動会ですとか、お祭りもあるようでございますし、防災関係のイベントもちょっと離れたところであると伺いました。
    皆さん、念のために申し上げますが、バレエの会場で間違ってここにいらっしゃる方、いらっしゃいませんよね。私は踊りませんので、バレエの会場はあちらの大ホールになっておりますが、間違いないですね。私は心配しているのは、あのバレエの会場に、ここへ来るべき方が行っておられるとどうしようかなと思うわけですね。今日は合併の話と聞いていたけど、ずっと踊っているのは、これの方がいいといって、そちらへ行かれたら大変だろうなと思いますが、そういう方はいらっしゃいませんですよね。
    合併の問題でございますので、そんなにバレエのように見目麗しいわけでもございませんし、場面転換がどんどんあるわけでもありませんので、できるだけご退屈のないようにと思いますが。何と申しましても非常に真剣なこの地域の未来を決めるような、また、もっと残酷な言い方をしますと、それぞれのまちが持っていた50年に達するような大きな歴史、あるいはもっとかも分かりませんが、その歴史を変えるような選択でございますので、随分厳しい話だと思います。そういうことで、私もできるだけ丁寧に、柔らかくとは思いますけれども、元々中身が厳しい内容なものですから、そこの厳粛さを忘れずにきちんとお話を申し上げたいと思います。
    ちょっとお断りしておかないといけないんですが、天気が最近いいものですから、空気が乾燥しまして、わが家は今風邪ひきが大はやりでして、私もちょっと喉が怪しいんです。それで、声が出なくなってしまうと本当にお聞き苦しいものですから、ちょっとのど飴がここに入っておりますが、声が出なくなる失礼さに比べますと、そのほうがまだ少しましかというところで、ご寛容いただきたいと思います。できるだけ、お聞き苦しくないようにお話申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

    さて、「市町村合併についての国の動向と地域の選択」と申し上げました。ですけれども、私も不勉強で、こちらへ伺うのは初めてのことです。何といいますか、この地域というか、この土地は地勢的には名古屋都市圏にすぐ隣接しているというところでありますので、やはり経済的には恵まれた地域であると思います。離島でありますとか、そういう明らかに山間部であるというようなところとは全く条件が違いまして、名鉄に乗って今日も私は伺ったわけですけど、本当に特急で10分。その特急も2時間に1本とかそんなんではなくて、ああいう感じでどんどん来ますので、本当に恵まれた地域であろうと思います。
    恵まれた地域であるということと、地域の課題がたくさんあるということは、実はセットなんですね。恵まれた地域であるからこそ、地域の課題もまた重いというところがございまして、この地域の場合は、結局、大都市圏に近い分だけ、土地の意味合いというのが違ってきて、都市になればなるほど土地というのは公共性を帯びてくるわけです。
    つまり、皆さん私有地で自分が使いたいように使えればいいんですが、その土地をいかに上手に効率的にうまく使うかによって、その地域全体の住みやすさとか、豊かさということと、すごく直結するわけですね。
    これは農村部ですと、自分が使いたいように使えばいいということになりますけれども、都市になりますと、交通の便・生活の便・美観とか、そういうことが非常に関係します。結局、都市というのは人が隣接し合って住むものですから、人と人との関係がすごく出てくるわけです。好きなように暮らしたいんですけれども、好きなように暮らしていたのでは、都市全体としての機能性とか利便性とか美観というところがうまくいかないものですから、どうしても公共的な観点での土地利用という問題が出てくる地域だと思います。
    その意味で、こういう名古屋に近いという抜群のロケーションにあるが故に、位置関係にあるが故に、いかに土地を持っている皆さんが納得して、もちろん納得してそこで理解を示さないといけませんけれど、いかにきちっと土地利用を計画的に総合的な観点で整えていくかという課題が、どうしてもあるところだと思います。
    そういう意味で、ここの1市2町が合併をして、本当の意味でのまちづくりとしてのややハードの意味ですけど、基盤を共通して一つの自治体の中で整えていきましょうというのは、それができればこんなにいいことはありませんよねというようなところなんですね。
    ですから、正直なところ、名古屋がこうあって1市2町が東西に広がっていまして、ここが合併して本当にハードの意味での都市整備というものを総合的にやれればいいのになあと思う。これはよそ者が見たときのこの地域に対する1つの見方です。ですから、この1市2町というものが、本当に手を携えて合併をして、きちっとその地域の問題について住民の方とお話ししながら、合意を取り、まちづくりを進めていくということができれば、こんなに幸せなことはないと思うような、そういう組み合わせなんですよね。
    ということと、現に住んでおられる皆さんが、別に合併をしてもしなくても私の生活が何ということはない中で、何となくその合併というものに対して、強く反対する気にもならないけれども、何かもう一つ得心がいきにくいと思っておられる方が、恐らく結構おられると思うんですね。おられて当たり前だと思います。それが、そんなこと全然ありませんというほうが少し不自然なぐらいで、やはり住民の方はいろんな思いを持って、いろんな考え方をした方がここにたくさん住んでおられるわけでから、全部で16万人ですか、それだけの方が住んでおられるわけです。そういう皆さんの心の持ちようがいろいろあって、この合併について非常に複雑な思いを持って、この場におられるという状況ではないかと思います。
    強い反対があるとは思いませんけれど、あるならばここまでは来なかったと思いますけど、もうこれは、この1市2町は地域の悲願ですというまでの強い思いを持った方はおられると思いますけれど、そんなにたくさんいらっしゃらないと思います。
    そういう意味で、平成17年3月1日という期限が今ありますけれども、それに向けて1年半ほどあるわけですけど、その1年半ほどの間で、この地域の合併というものを、それぞれ住民の方がどれぐらい意味あるものとして受け止めることができるかどうかと。なるほど自分はそれなりに、本当は本音では誰も合併なんかしたくないんですよ。本音ではですね。でも、合併をしてある大きな目標を達しようとすることについて、少なくとも私としては一応理解はしたというふうに思う人がどんどん増えてこないと、これはなかなか形は整えられても中身が伴うというところまで行かないと思います。
    そういう意味で、一方、合併協議というのはある手続きを踏んできちっと進んでいくわけですけれども、それと同時に、住民の気持ちもそれについていかなければ、いざ17年3月1日のゴールではなくて、スタートですね。スタートを迎えたときの心の準備ということになっていないと思うわけであります。
    ですから、今申し上げたことは、この地域が合併する意味はすごくはっきりしていると思います。この組み合わせで合併ができればいいなというふうに外の人間は思う人が多いと思います。が、住民の方が本当にそういうふうに思うかどうかというのは、これはこれからの話であって、それに向けて気持ちを整えていくというか、高めていくとかいうことを、この合併協議と並行してやっていかないと、本当によい合併にはならないと思います。
    ただ、冒頭に言いましたように、例えば離島で、離島といってもいろいろありまして離島で何々町となっていますけど、離島が1島1町ならまだいいんでけれど、3島1町みたいなところですね。島が3つぐらいあって、そこで何々町になっていて、別にその3島の間に橋が掛かっているわけでもなくて、3島合わせて6,000人ぐらいで、6,000人ぐらいだとやはり分権の時代になると辛いと。この船が着く対岸のところの市と合併しようと、ところが、ここは6,000人だけど対岸の市が例えば15万人だと。ここは橋がもう絶対かかるような距離ではないというときに、3島1町で6,000人、対岸が15万人となったときに、合併がはたしてできるかですね。
    先ほど私が言いましたように、当地域の場合には、大都市圏に隣接しているから土地が公共性を帯びますので、その土地利用をいかに上手に使うかによって、長い目で見たらその地域の人にとっての大きなメリットになると思います。そういう課題が離島の場合にはないわけですよ。離島は離島ですから。
    それで、6,000人の町が15万のところと合併するというのは、これはもう発言力をきちんと担保できるかどうかというのは合併してみないと分からないという、その怖さがありますので、その怖さの中で合併という決断をするやしないかという話になると、それはもう本当に、賛成する人と反対する人が、中にはつかみ合いのけんかをしなければなかなか収まらないというような、そういう厳しい地域もありますね。
    今、本当にこれは大変やと思うのは、私はそういう地域でありまして、それに比べると、何といいますか、何を目指すかということが、ある程度見えているという部分だけ、あるいはやはり都市に近いということだけあって、経済的なことについてはある程度豊かさが、今の経済状況は悪いですけれど、それでもまああるというのと比べますと、何といいますか、経済的にはですよ、人の気持ちという意味ではなくて、経済的には有利・不利というものはあるものだなあと思います。
    思いますけれども、でも合併というのはどんなに条件が整った地域でも、整っていない地域でも、合併というものの辛さ・せつなさ・嫌さとか、耐え難さというのは、これはたぶん同じだと思います。人の気持ちという意味から見ればですね。合併はせつなくて、辛くて嫌なものなんですね。
    それをしてでもやるべきものがあるということを、ある程度住民の皆さんがそれやったら仕方がないなというふうに得心を得なければ、もちろん合併はできないわけですけれど、辛さとかそういうものは、どんな条件が整った合併でも同じだと思います。
    そういう意味で、合併協議そのものはある手続きを踏んできちっとしていますけど、それと並行して地域の住民の方の理解というのが高まっていくということをしていかないといけないと思うわけであります。
    せっかく開いていただいたシンポジウムに私もお招きいただきましたので、冒頭偉そうなことを申しましたですけど、ぜひ、今日を機会に、合併というものに対する住民の真剣さが、さらに増し加わったというふうになればいいなという気持ちを込めて、ややちょっと偉そうに、何を偉そうにと言われるかもわかりませんが、申し上げた次第でございます。何とぞ失礼がありましたらご寛容いただきたいと思う次第でございます。
    そういう意味で、外側から見ればいいですねということですけど、内側の方から見れば、それはまたそれで、だから何の心理的抵抗をなく合併をするということでは決してないと、そのためにはいろいろ地域で議論を喚起して世論を高めていくということが必要ではないかという、そういうことでございます。
    また、今日のパネルディスカッションをしますこういう場を設けられた目的、きっかけもそういうことだと思いますので、本日はお休みの中、わざわざお運びいただきましたので、ぜひそういう場としてご活用いただきたいと思うわけでございます。
    それがまず、最初の話でございまして、この地域の合併というものをどうつかまえるかというのが、最初の申し上げたことでございます。

    さて、合併を通じて何を目指していけばいいかということを、住民の目で考えてみようということが次の話でございます。
    せっかくこういうのを用意いただきましたので、ちょっと使いたいと思います。普通の黒板ではなくて高度なものですから、どう使っていいか分からないと思いながらここにいるわけですけれど……。
    今、自治体評価というものが……、これは昔ありましたね。子供のおもちゃでピーっと書いたら何か字が書けて、ピッとめくったらスッと消える。そういう感じのに似ていますね。どうでもいい話ですけれど、皆さんもうちょっと、せっかくお休みですので、私は歌ったり踊ったりおもろいことを入れたら、それはいいんですが、そうはいきませんので、もっと気楽に、そんなおもろない話ではないと思いますのでね。ちょっとリラックスして聞いていただければと思います。
    自治体評価というのがあるんです。それぞれの自治体を比較評価しましょう。だから、1位の自治体と2位の自治体と、まあ100位の自治体とか出てくるわけですね。自治体なんか評価するもんではないと、今までは、5年前まではそんな雰囲気でしたけど。今、大学で一番大事なのは学生による授業評価です。要するに、昔、私らの学生のときは、そのときはもうちょっと違いましたけど、大学の先生はこんな分厚い本なんかを抱えてきて、どんと来て、話を淡々と高邁な話をしてですね。学生が必死になってノートを取っていると、これが授業です。
    違いますね。まず、平均的な大学の先生はどうかわかりませんけれど、私などはそんな高邁な知識がありませんし、教育というのは一応、サービス業なんですね。ですから、お客あって、つまり学生ですね。学生あっての教育ですから、やはり学生がなるほど聞くに値する授業であると思ってもらわないといかんということになります。
    話すテクニックというのがあって、これは間をどれぐらい上手に使うかというのがテクニックなんですね。皆さんもお気づきか分かりませんけれども、私は割りに間を使う方なんですよ。よく聞いておられたら、間がすっと空いたりすーっと喋ったりします。この間で90分持たせるわけです。この間のタイミングで。本当にそうなんです。
    学生がノートを取っているわけです。そうすると、ノートを取るタイミング。今はノートを取るタイミングだよとか、今は聞くタイミングだよと、暗に陽にわかるように言ったりしながら、学生にノートを取りやすいようにしながら授業に運びように変化を持たせていく。そして、ちょっと何か飽きてきたら、何かちょっと違う話を入れたりして、なんじゃかんじゃ言って、おっ、もう90分たったかと、これがテクニックなわけですね。これをやりませんと、中身さえよければ、運びようがどうであろうとよい授業なんだというわけにいきません。えらい時代になりましたですよ。
    まあごちゃごちゃ言っていますのは、自治体も評価の時代だと。なぜかというと、学校の先生だって必死になって評価に耐え得るような授業をしようとしているわけですから、評価の時代だということになると、それだけのことを、すいません、だいぶひっぱってしまいました。申し訳ありません。
    自治体評価の時代。自治体を、ではどういう観点で評価したらいいか。3つの観点があると思います。
    1つは住民サービスの質と量ですね。これが何と言ったってメインです。税金払っているのだから、払っている税金の分だけちゃんと返ってくるのかと、住民サービスの質と量ということなんですね。
    ところが、住民サービスを一生懸命、あまりやりすぎると財政状況が悪くなるかもわかりませんから、当然、いいけど財政状況はどうなっとんねんと。
    こことここ、この2つだけですと、まあそれはそうやろうということなんですが、実はもう一つある。ちょっと難しい話をしますと、ガバナンスとかいうんです。ガバナンスではよく分かりませんので、役所内の意思決定とか、住民参加とか、情報公開とか、こういうものです。情報提供みたいなものです。ガバナンス。
    今、改革派市長とか知事とか、たくさんいらっしゃるんですけれど、住民サービスの質と量で競っているわけではないんですよね。例えば、宮城県、岩手県、三重県、高知県、鳥取県、よく新聞に改革派知事として……、ひとつ忘れていました。愛知県とかですね。冒頭に言うべきだったんですよ、大変申し訳ございません。そういう改革派知事というのが出てきますけれども、改革派知事は住民サービスの質と量で競っているわけではないんですね。何で競っているか。情報公開をしているとかですね。つまり役所の意思決定を透明にしている。住民から見て、何かおかしいのではないかというような決め方を私たちは絶対にしません。住民が納得のいくようなものの決め方をしています。それを担保しようと思うと、それを発揮させようと思うと、情報公開をして何かあれば住民がすぐ調べて、こんなんおかしいやないかということをやっていたら、見たらすぐわかるようにしておくと、実際には住民がその場にいて見ていなくても、住民がその場にいて見ているのと同じことになりますので、いつも住民を意識しながら仕事をするようになるという。情報公開ってそういう意味ですね。
    そして、役所の人たちだけが仕事をしているのでは、役所の目線になってしまうので、役所の目線ということは、結局、役所というものの組織の理屈みたいなものが優先されるわけで、住民の理屈よりもうちらの理屈のほうが優先されるということですね。
    大学にも言えるんですけれど、大学の教師にとっていい授業のやり方というのと、学生が見ていていい授業のやり方というのは、これは違うわけでありまして、情報公開をしたり住民参加、この場合学生参加ですけど、することで、学生のほうから見て、つまりお客さんのほうから見ていいことをやろうと思えば、住民参加とか情報公開とか、せざるを得ない。それをしつつ、役所の中の意思決定をいつも透明にしていくというふうな、これをガバナンスというんですね。
    この3つが揃ってこそ、よき自治体だということになりまして、自治体評価しようと思うと、この3つの観点でやりますというようなことです。
    今はだから、自治体は何で競っているかというと、財政状況で競っているわけでも、住民サービスの質と量で競っているわけでもないんですね。住民サービスの質と量というのも、もちろんこれは中心ですけど、これはある程度どの自治体でもやれるんですよ。それぞれやっているわけです。
    特にこの1市2町などは比較的先進的な取り組みをやってこられた地域だと思います。よそに比べてうちのサービスは充実しているということを随分誇りに思っておられる方が、この地域には結構おられると思うんですね。たぶんそうだろうと思います。
    財政状況は、ご承知のように年々厳しくなっているとはいえ、もっともっと厳しいところがありますから、あんまり大きな声では言えませんけれども、まあ厳しいところがありますね。役所の方でないと分からない話ですけれども、経常収支比率が90%とかですと、なんでそんなにいいんですかと、近隣の自治体に言われてしまうような地域があります。ちょっと信じられないですよね。90%というと平均的には凄く悪いんですけれども、地域全体がすごい悪いものですから、経常収支比率100%を超えていても、別に特別に悪いというわけではないというようなところもあります。それに比べると財政状況はこの地はそんなに悪くないです。そうしたら、やはりガバナンスということです。
    何を言っているかというと、私はこの1市2町、非常に近代化された地域で、都市としての魅力を高めていく地域であると思います。特に大都市圏の近隣にありますので、そういう地の利のよさを活かそうと思えば、いかにその都市としての機能を高めていくかということになります。都市としての機能を高めていこうと思うと、役所の目線で仕事をしているだけでは駄目なんです。そこへ住民がぐっと入ってきて、住民参加とか情報公開とか、要するにガバナンスを整えていくことで、本当に役所と住民が一体化していくという。そういうことになってこそ、この1市2町というのは輝く。実はこれは合併とは関係ないんですよ。合併をしてもしなくても、この地域はそういうことをどんどん目指していく地域だと思うんですが、やはり合併というのはそのきっかけなんですよね。
    例えば、子供が生まれたことをきっかけにこうするとかですね。大体赤ん坊が生まれて家にいることになると、お父さんはたばこをやめさせられるというのがよくありますね。今までは、子どもがおる前でたばこを吸われてはいけないからということで、今までベランダで吸うとか、物入り用だからたばこ代はもうやめなさいとか、この間税金上がったからたばこやめなさいとか。そういう私は全然吸いませんので、その気持ちよく分かりませんけど、何かきっかけに、本来やらなければならないことがあっても、なかなかできません。でも、何かきっかけがあったらやりますという。たばこ、禁煙なんか、一つその格好の例だと思います。別にいつでも本来、やっぱり健康のことを考えたらやめたほうがいいんだけれども、何かきっかけがなかったらということがありますね。
    この合併ということをきっかけにガバナンスを整えていくということが、非常にぴったりくる地域なんですね。規模がまた、ガバナンスするというのにも、すごいいい規模なんです。どうしていい規模かといいますと、やはり30万とか40万ぐらいの市になってきますと、一人の市長さんで役所の職員の例えば係長級以上の顔と名前と性格が全部分かっているとなると、40万、30万となると、ちょっと難しいんですよ。そこまでやっぱり見切れないというところがあるんですね。
    そこで、10数万ぐらいですと、本当に……、民間企業で言えば一人の社長が役所全体に目配りをして、そしてちゃんと一人ひとりの人材を活かす。活かそうと思えば、自分は市長にいつも見られているという意識を持たないと、これはなかなかやる気が出てきません。
    やはり40万人になると、全員の職員が自分は市長に見られているというのは、無理なんですよね。市長もそこまでも聖徳太子のような能力があればですね、これはみんなの何を言ったって全部見ているんでしょうけど、なかなかそうはいきませんので、この10数万というのは悪くない規模ですね。
    市町村と、先ほど都道府県で改革派知事と言いましたですけど、市町村で本当に頑張っているところというのは、この10万から20万ぐらいのところがやはり多いです。やはりここは土地柄も、地勢的にも規模からいっても、本当にこういう今、最もいい自治体になれる条件が整っている。
    はっきり言いまして、何を目指して合併なのかということについて、いろいろ考え方はあるんだけれども、もう1つ絞りきれないというようなことでしたら、差し出がましい言い方ではありますけれども、今自治体評価すると、3つの側面があって、住民サービスの質と量とか、財政状況ということではもう既に相当な実績を上げておられる自治体であろうかと思いますので、それ故に、ガバナンスを整える。合併をきっかけにしてガバナンスを整えていくということを目標にして、要するに情報公開だとか住民参加をどしどしやって、そして、住民と役所との間の気持ちの距離がうんと近くなるような、そういう役所を目指すんだということであれば、この合併問題に必ずしも関心を持っておられない一般住民の方も、まあそういうことなら、ひとつお手並み拝見といこうではないかということになるのではないかと、大変押し付けがましい、ものの言いようをいたしましたけれども、そういうことをおやりになったらどうかなと思います。
    皆さん、住民の方が多いと思うんです。役所の方は割りと少ないと思うんですけど、役所の方もたくさんおられると思いますけどね。今、43歳なんですが、私よりちょっと下の年齢の役所の方、係長で課長補佐になるかならんかぐらいの方で、やっぱりそのガバナンスを整えて役所としていい仕事をするということに、すごく情熱を持っている職員の人ってたくさんいるんですよ。こういうガバナンスを整えていきますと、はっきり言いますと、自分がやる仕事によって住民との関係がすごくはっきり見えてきますので、失敗すれば随分辛い思いもしますけど、うまくいけばやっぱり喜びがあるんですね。
    公務員という仕事は、9時に来て5時に帰って気楽でいいなあなんていうふうに、公務員以外の方はよく言われるんですけど、実は中へ入ってみるとそういうことではなくて、公といいますか、自分だけの利益を越えた地域全体の公の利益みたいなものを追い求めることだということがはっきり自覚できると、公務員という仕事は、これはやはり民間にはないすがすがしさがあるんですね。
    ところが、そういう反面、いわゆるお役所仕事というような、これは別に自分の仕事が住民のとってプラスかマイナスかよく分からないけど、まあやると決めたことだからやっていくということになれば、これは仕事としては、そんなに自己実現につながらない仕事なんですよね。
    要するにどういうことかというと、役所の仕事というのは、うまくやれば、この仕事ならば自分が生涯かけても全然悔いはないというぐらい、すごくやりがいのある夢の持てる仕事にもなる反面、もう役所にいる時間は給料をもらうための時間の切り売りで、役所以外のところで自分は自己実現をしなければならないみたいな、そういう逃げみたいな話にもつながるところがあるんですね。この地域がどうのこうのというわけではないんですけれど、役所の仕事はうまくやればと、うまくやらなかったときの差が激しいところなんですよ。
    ですから、われわれぐらいから下ぐらいの世代はみんな、なんとか自分たちは自分たちの仕事を通じて自己実現したいと、いいほうに行きたいと思っている人は結構います。僕はいると思います。
    皆さん、案外公務員というものに期待を持っておられない方いらっしゃるかも分かりませんけど、できれば、今日を機会にそこはちょっと改めていただきたいと思うんですね。
    そういう意味で、このガバナンスを整えていきますと、役所の意気は上がりますよ。すごく上がってきます。
    全国の中で市町村長さんのアンケートで、「一番見習いたい自治体はどこですか」というのを、読売新聞がやったことがありまして、一位になったのが北海道ニセコ町というところです。玄人仲間から評価されたところです。このニセコ町に片山健也さんという、町長の一番頼りにしている幹部の一人ですけれど、片山さんという方が講演されている講演録の中に、私の個人的に知っている人ですけれど。役所には随分差がある。やっている仕事は同じなんだけれども、役所そのものが持っているモティベーション、やる気(士気)の高低には随分差があるものだという意味のことを言っています。こういうのを僕が言うと偉そうなんですけど、現場の人が言うと説得力がありますから、私が言っているわけではなくて、片山さんが言っていますというふうに逃げますけど、まあ私が言うと、「そんなもん、役所に勤めたこともないくせに偉そうに」と、そう言われても仕方がないので、そう言っておられます。
    ということは、つまりガバナンスには、随分自治体によって差があって、それが高いということは、ものすごく地域にとってはプラスですね。ですから、やはりこれを目指していくべきだと、私はぜひ、今日はこれを申し上げたいと思ったわけでございます。
    今のが2つ目の話でございまして、要するに合併を通じて目指すべきものは何かということを、今申し上げたわけでございます。

    さて、3つ目ですが、国の動向ということになります。
    これは、ちょっと細かい制度の説明とか、言葉の説明がいろいろありますので、やっていますと、あんまり時間がたくさんいるものですから、すごく端折った結論だけを言うようなものの言いようになって申し訳ないんですけれども、国としては合併を基本的には最重要政策の一つとして考えているわけでありまして、小泉内閣もこの間、自民党としての政権公約、マニフェストの中にやはり市町村合併の推進というのは入っています。
    ここが全く合併について動き出していない状況ならば、今のところをもっと詳しく申し上げて、どうして国は合併を推進しているのかとか、この地域にとって合併を推進する意味は国の動向と照らしてどうかということを、事細かに申し上げる必要があるんですけど、もうここは合併をひとつ動き出しているわけですから、中身をいかにいい中身にしていくかという段階ですので、あんまり国が一生懸命推進しています。そのことの是も非もあるんです。国が推進しているからいいことかどうかというのは、これはものすごくいろんな意見がありまして、私も必ずしも国の合併の推進の仕方は、私は国の委員もしていますけれど、非常にいいやり方だというようには思いませんね。思わないところがいっぱいあります。思いますが、私としては国のやり方云々はともかくとして、よい合併はやったほうがいいと思うんです。つまり国の合併推進の仕方というのは批判もあって、私自身も批判的ではありますけども、国の進め方が悪いからどんな合併もやらないほうがいいとは全然思わないんですよ。
    国のやり方はやり方として、ちょっと問題はありますけど、皆さん足元の問題として、よい合併ができそうなら、これはやったほうがいいと思うわけですね。ところが、よい合併ができそうになければ、別に国に調子を合わせる必要もないんで、よい合併ができそうになければ、これは合併はできないと思いますよ。国が言っていますからやりますなんていうことにはならないと思います。そういうふうには思うわけです。
    私、今日冒頭に申し上げて2つお話ししましたけど、この地域は課題がこうですと。こういうことだと思いますよ。皆さん、これはなかなかそういうものをみんながそのとおりだと、今の段階で言っていただけるかどうかは別として、こういう課題があると思います。そして、合併して、こういうガバナンスを目指すべきだと思いますということを申しましたが、これは私なりに今、ここで進んでいる1市2町の合併が、よい合併だというふうに後で地域住民に評価してもらおうと思えば、こういう方向が、ひとつ私としては考えられます。これは押し付けではありませんから、別にそれは聞き流していただいて全然構わないんですけど、こういうことがあると思いますということを申し上げて、要するに、この1市2町の合併をどうすればさらによい合併になるのかということを、私なりに申し上げているわけでございます。
    1市2町をよい合併に向けて努力しておられると思いますけど、よい合併だというふうに町民の皆さんも心情的に思わなければ、やはり合併はできないんですよね。国の思惑があるので、それに合わせざるを得ないのが市町村の宿命ですとか、そんなんではですね。50年よりももっと長い歴史のある地域自治というものを、そう簡単には諦められないです。合併は辛くて嫌でしんどくて本当はやりたくないもんだけれども、それを超えるあるものがあるというふうに、少なくともここにバッジつけた方がそう思い、それを選挙で選ばれた方として、住民に自分として自信を持って伝えられるというところまでは、少なくともいかないと、やはりよい合併ということにはならないわけでございます。よい合併はやはり目指していただきたいと思いわけです。
    よい合併ならば合併しないよりはだいぶいいと思います。でも、よい合併でなければ、これはやはりできないですね。合併することが目的ではなくて、よい合併をすることが目的だと思います。
    国の動向としては、やはりいろいろ国としての思惑。この国というのは政治ですけどね。国会です。総務省とか内閣とかいう行政府ではなくて、立法府の問題です。国の思惑というのは立法府としてそういうことを一生懸命やっている。要するに、今は事実上の選挙期間中ですから、あんまり自民党がどうで、民主党がどうでという言い方をすると、今日はいつの間に政権演説会になったんだということになりますから、ちょっと注意してどの政党にも中立にものを言わないといけません。今は非常に難しい段階なんですけどね。
    それぞれの政権。与党とか、野党とか、この与党とか野党とかいうところが、合併を一生懸命推進しているわけで、総務省はそれについていっているという感じです。総務省の思惑で合併しているというよりも、政治の思惑があって、それに総務省が後ついていっていると、総務省がついていくから県もついていくというような状況だと思います。
    そういうふうに言うと、何か自民党が合併を推進していて、民主党が反対しているみたいに聞こえると思いますか、これははっきり申し上げますが、むしろ合併問題などは野党が先に引っ張ったところがあります。一番最初に保守系の政治家で合併問題を推進したのが、小沢一郎です。今、民主党に合流しましたけど、小沢一郎がもう随分前になりますけどね。あの人の本の中に、全国の市町村を300にするというものが出てきました。
    ああいう人たちが、まず流れをつくって、民主党は非常に合併熱心で、その出来上がった流れに、自民党はクッと乗ったというところがあって、もちろん自民党が乗ったことによって、国の政策としてどんどん形になっていったというところがあります。
    ですから、国会で議席をたくさん持っている政党で、合併を推進していない党は日本共産党と、社会民主党はちょっと党の公約を見ても微妙な書き方をしていますが、それ以外のところは主な政党は少なくとも合併推進なんですよ。というと、国会の議席からいうと、もう圧倒的多数です。もう自民と、民主、公明、保守新党、これ全部乗ってくるわけですから、そういう意味ではもう圧倒的多数。そして、合併推進ということになっていって、そして平成17年3月という期限までに合併をしてくださいというようなことになっています。
    そして、これからは、財政的には非常に厳しくなります。今まで受けていたサービスが当たり前のように受けられるということにはなりません。そして、皆さんも三位一体改革というのをちらっと聞かれたと思いますけど、もう時間がありませんので、私は45分までだと思っていたんですが35分だということに今気がつきまして、あと10分話すつもりだったんですけど、今から急激に終わります。しまったとか思いながら。三位一体の改革は10分あればお話できたんです。ちょっとやめますのであれなんですが、結論だけ言います。
    自治体間の格差が随分出るような形での財政制度改革にやはりなる懸念があります。三位一体改革自体は分権的にはなるんですけどね。分権的にはなると同時に、格差が非常に出るような形になりかねません。そういう形になる中で、この1市2町の合併というのは、すごくプラスかどうかは別として悪くない選択肢だと思います。悪くない選択肢。
    ただ、お金的に見れば、合併する、しないということは思い切りプラスにもならないし、決してマイナスにもならないというぐらいのところです。ですから、結局は、ただお金というのは使い方が問題なんですよ。使えるお金がどうなるかということも大事なんですけど、それをどう使うかというところも大事なんですよね。だからむしろ、この1市2町の合併について言えば、合併してからそのお金をどう使うかのほうが大事で、使いようによってはやっぱりそんなに悪くない組み合わせであることは、もう間違いないと思います。
    そうすると、使いようということになります。使い方ということになります。やっぱりガバナンスの問題なんですよ。あるお金をどう使うかというのは、これは意思決定の問題ですから、これはやはりガバナンスの問題だということになります。
    そこで、話を急激にまとめつつありますけれども、やはりよいガバナンスを目指した合併をしていけば、今の国の政策にやはり上手に乗っていくということになりますので、ここがキーポイントだと思います。

    皆さん、今まさに合併が渦中ですが、その渦中という割には住民の合併についての意識がそんなにも盛り上がって、駅前の赤提灯で皆、話している中で合併の話がどんどん出てくるという状況では多分ないと思うんですね。しかし、それがそういうふうになっていかないと、やはりいい合併はできないというところでありますので、ぜひ、今から。できれば、今日をきっかけにしていただければありがたいですが、このガバナンスということをちょっと頭に置いていただいて、この合併について地域の皆さん同士の意見交換を深めていただきたいと思います。
    どうも、ありがとうございました。

    お問い合わせ

    稲沢市役所 総合政策部 秘書政策課 企画政策グループ 

    愛知県稲沢市稲府町1番地

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