稲沢のむかしばなし むじなたぬき(稲沢市法花寺町)
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稲沢市の西部にある法花寺町につたわる「むじなたぬき」のおはなしです。
むかし、むかし、法花寺村に「むじなたぬき」が住んでおった。
このたぬきは、とても手におえないいたずら者で、村の子供たちは、この名まえを聞いただけで逃げてしもうた。
ある夜のこと、田吾作はオシッコのためおもてに出た。すると、木のかげから声をかけられた。
「ポンポコポン。これこれ、おまえは親こう行者の田吾作だな。」
「おっ、お前はむじなたぬきー」
田吾作は、とっさに逃げようとしたが、魔法をかけられたように体が動かなくなり、そのまま寒い寺の本堂に連れていかれてしもうた。
田吾作は、はらを決め、
「こらっ、たぬき。おれを食うつもりか。食うなら、さっさと食え。」とどなりつけた。するとたぬきは、
「ハッハハハ。おれは、そんなことはしない。ポンポン。どうだ、それより、一緒にあそばんか。」
こうして、田吾作とたぬきは、時間のたつのをわすれてあそび、そのうちに眠ってしまった。
次の朝、田吾作は目をさますとあたたかいふとんの中であった。
このことは、すぐ村中の子どもたちにつたわった。
しばらくたったある雨の日、今度は村一番の大金持の息子でガキ大将でもあり、いじめっ子の与作がさらわれ、野原の真中につれていかれた。
たぬきは、いましめるようにいった。「よいか、与作。今度いたずらをしたら、お前を頭からバリバリ食べてしまうぞ。」
与作は二度としないとあやまり、それ以来、いたずらをしなくなった。
それからは、どこへ行ったのか“むじなたぬき”はしなくなったということじゃ。